団地ぐらしは、先ゆく選択肢かもしれない……
【向島ニュータウン再生プロジェクト⑤】

京都府向島ニュータウンの風景

「団地に住む」という選択が、どこか“懐かしい”ものとして語られる時代がありました。けれど今、私たち長栄は思います。それは決して「昔ながら」ではなく、「これからの暮らし方」そのものかもしれない、と。

向島ニュータウンでの再生プロジェクトを進めるなかで、団地の持つ本来のポテンシャルと、令和の暮らしにフィットする理由が少しずつ明確になってきました。

まず、団地のいちばんの魅力は「余白」です。

余白とは、単なる広さではありません。建物と建物のあいだにある空、遊具が整った公園、自由に走り回れる土のグラウンド。そんな“目的のない空間”が、いまの子育て世代にとって、どれほど貴重なものであるか——、私たちは現場で実感しています。

京都府向島ニュータウンで行うイベントの説明

例えば、子どもたちが自然と外に出て遊び、親たちが公園で言葉を交わす。そんなシーンが、特別なイベントではなく“日常”として息づいています。団地の設計には、無理なく人と人がつながる“場”の設計思想が、しっかりと根付いているのです。

リノベーションを施した住戸は、間取りも設備も、今の暮らし方に合わせてアップデートしています。広めのLDKや大容量の収納、ベビーカーも置ける玄関スペースなど、子育て世帯が「これは助かる」と感じるポイントを、ひとつひとつ丁寧に盛り込んでいます。

京都府向島ニュータウンの外観
京都府向島ニュータウンの公園

それでも、団地ぐらしの本質は、ハードではなくソフトにあると私たちは考えています。

たとえば、ご高齢の入居者の方が、子育て世帯のご家族に「ちょっと子ども見とくよ」と声をかける。あるいは、ワークショップで一緒になった親子同士が、次の週末も公園で顔を合わせる。そんな“ちょっとしたお節介”が、かえって今の社会には心地よく感じられることもあるのではないでしょうか。

団地には、多世代が共に住まう風景があります。同じ年齢層で固まりがちなタワーマンションや戸建て住宅とは異なり、年齢も背景も異なる人々が自然と隣り合う。このバランス感こそが、地域の中で子どもを育てていく、もうひとつの安心感につながるのだと思います。

もちろん、全てがスムーズにいくわけではありません。生活のスタイルや価値観の違いによる摩擦もあるでしょう。けれど、私たちは管理会社として、そうした“出会い”のきっかけを少しでもポジティブなものにできるよう、イベントや交流の場づくりに力を注いでいます。

それは「地域を元気にする」という大きな理想ではなく、「暮らしてみたら、ちょっと良かった」と感じていただくための、地に足のついた試みです。

団地ぐらしには、タワーマンションにはない“懐かしくも新しい豊かさ”があります。固定観念にとらわれず、余白や共助を含んだ暮らしを選ぶ——、それはきっと、ちょっと先を行く暮らし方なのかもしれません。

向島ニュータウンで、そんな「これからの暮らし」をご一緒できることを、私たちは心から楽しみにしています。