“向島らしさ”は、京都の暮らしに寄り添う
【向島ニュータウン再生プロジェクト③】

京都府向島ニュータウン

「京都」と聞いて、多くの人が思い浮かべるのは、風情ある町並みや歴史的な寺社仏閣かもしれません。けれど、私たち長栄がいま向き合っているのは、そうした観光の京都とはまた違う、“暮らしの京都”です。そしてその象徴こそが、私たちが再生に取り組んでいる「向島ニュータウン」だと思っています。

向島は、京都市伏見区の南端に位置し、静かな住宅地と豊かな緑が広がるエリアです。都市部へのアクセスも良く、最寄りの向島駅から京都駅まで15分程度。通勤・通学にも便利なこの地に、私たちのプロジェクトの舞台があります。

向島ニュータウンは、1977年に入居が始まり、全体で4200戸を超える規模を誇る大団地。計画的につくられたこのまちは、公園や教育施設、生活インフラがバランスよく配置された「暮らしの器」として設計されてきました。

この地域の大きな魅力は、何よりも「余白」にある。

京都府向島ニュータウンの風景

広い空と大きな公園、子どもたちが駆け回れる土のグラウンド。高層ビルに囲まれた都市部ではなかなか見られない、のびのびとした空間がここには残されています。地域の人たちが集まる子育て支援センターやテニスコートなど、日々の暮らしの中で“ふとした豊かさ”に触れることができる環境です。

実際、私たち自身の子どもたちも、この地域の公園によく遊びに来ています。たとえば休日、何気なく立ち寄った公園でテニスをしている親子連れの姿や、ボールを追いかける子どもたちの笑顔に出会うと、「こういう場所が、いま改めて必要とされているんだ」と確信します。

京都府向島ニュータウンの風景

向島には、華美ではないけれど、どこか人の暮らしに自然と寄り添ってくれるような雰囲気があります。地域の人同士の距離感も、近すぎず、遠すぎず。マンションや戸建て住宅とはまた違った、“団地ならではのちょうど良い関係性”が息づいています。

私たちのプロジェクトでは、そうした向島本来の魅力を損なわず、むしろ引き立てるような住まいづくりを意識しています。住戸のリノベーションだけでなく、周辺環境や地域とのつながりも、暮らしの大切な一部だと考えているからです。

たとえば、近年では既存の住民の方々と新たに入居される子育て世代の方が一緒に楽しめるイベントやワークショップを開催しています。そうした取り組みを通じて、団地の中に少しずつ、新しい関係性や温かな交流が育まれてきました。

京都府向島ニュータウンの公園

“向島らしさ”とは、派手さではなく、やさしさ。静けさではなく、たしかな安心感。

この場所のポテンシャルは、まだまだ眠っています。私たちはここでの再生を通じて、「住む人の暮らしに寄り添う、もうひとつの京都」を育てていきたいと考えています。